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朝日税理士法人のブログを掲載します。

2016.01.28

【連結納税/第15回】連結納税における行為又は計算の否認規定

 今回は、法人税の行為又は計算の否認規定を取り上げてみたいと思います。通常の業務でお目にかかることは滅多にありませんが、連結納税制度に係る規定も存在することから、その内容を簡単に確認してみたいと思います。

 

1 行為又は計算の否認規定とは

  法人税法(以下「法」といいます。)132条1項は、同族会社等の行為又は計算でこれを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となるものについて、税務署長が法人の行為計算を否認することができる旨を規定しています。これは、租税回避行為に対する包括的否認規定として存在し、旧通達では低額譲渡等の行為がこの規定の対象になるとされていました。

  近年では、組織再編税制や連結納税制度の創設に伴い、これらの制度に係る行為又は計算の否認規定が新設されるなど、複雑化した税制に対応するための立法が行われています。なお、組織再編税制や連結納税制度に係る行為又は計算の否認規定はいずれも租税回避行為の否認規定として制定されたもので、同じような規定ぶりとなっています。

 

2 連結納税における行為又は計算の否認規定

  連結納税における行為又は計算の否認規定(法132条の3)は、連結法人の行為又は計算でこれを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となるものについて、税務署長が連結法人の行為計算を否認することができる旨を規定しています。この規定の適用に当たっては、その行為又は計算が法人税の負担を不当に減少させるものか否か(不当性要件)が問題となりますが、現時点では本規定の適用が争われた訴訟案件が存在しないため、何をもって「不当」とするかの判断基準は明確ではありません。不当性要件については、一般的に、行為又は計算が「異常ないし変則的で租税回避以外に正当な理由ないし事業目的が存在しないと認められる場合(金子租税法第20版)」と説明されており、適用に当たっては個別具体的な事情を考慮することが当然に求められることになります。

  なお、この規定は連結法人の各連結事業年度の連結所得に対する法人税について適用されるもので、連結法人でない法人の所得については適用されません。

 

3 最近における行為又は計算の否認規定(法132条)の適用事例

東京地裁平成26年5月9日判決は、内国法人が行った自己株式の譲渡取引に伴って生じた多額の譲渡損失額(約3,995億円)の損金算入を否認した課税庁の更正処分等を取り消しました。この判決の主な争点は、有価証券の譲渡損失額を起因として発生した欠損金額により法人税の負担が不当に減少したか否か(法132条の適用があるか否か)となっており、裁判所は「不当」と評価される事実はないとして否認規定の適用を取消し、納税者の申告内容が是認される判決となりました。

本件は、世界的に有名なIT企業の100%子会社である内国法人が原告となっていることもあり、注目された事例です。なお、原告を中心とする企業グループは連結納税制度の採用により、本判決で是認された欠損金額を連結所得の金額の計算上損金の額に算入しており、多額の節税効果を得ています。本件は、原告の単体納税時の譲渡損失の発生が否認されたことについて争われたものであり、連結納税における行為又は計算の否認規定(法132の3)が争点となったものではありませんが、単体納税制度と連結納税制度を絡めた節税手法が前提となっており、「不当」の判断にあたり重要なものと考えられます。

  なお、課税庁は第一審の判決を不服として東京高裁に控訴しましたが、東京高裁平成27年3月25日判決は控訴棄却の判断をしたため、現在最高裁に上告中です。

 

4 おわりに

  最近では、企業活動の国際化・複雑化により、複雑な節税スキームによる租税回避行為が散見されるようになりました。このような節税手法の封じ込めは、個別規定では難しく、最終的には行為又は計算の否認規定が適用されることになると考えられます。不当と判断される事実は事案によって異なりますが、最近の事例は1つの判断基準になると思われます。

以上

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