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2013.08.27

海外子会社に対する役務提供 第2回:日本の親会社の税務 その2(移転価格課税か寄附金課税か?)

前回からシリーズで、日本企業の海外子会社に対する役務提供について、日本、海外両サイドの課税関係を概観しています。
今回は、日本の親会社側の役務提供料に係る税務の第2回です。

第1回では、日本の親会社の海外子会社に対する経済的または商業的価値がある役務提供については、日本の税務上、移転価格税制に基づき、対価を算定すべきことをご説明しました。

ところで、日本の税務では、経済的利益の無償の供与は、原則として寄附金とみなされ、損金算入が制限されます。特に海外子会社のような国外関連者への寄付金は、全額が損金不算入となります。よって、一般的には、海外子会社に対して請求すべき役務提供料が未請求の場合には、寄附金課税(注1)を受けることになります。

(注1)寄附金課税:金銭、物品その他経済的利益の贈与又は無償の供与として課税することをいう。国外関連者への寄付金は、全額が損金不算入となるものと定められている。

一方 、海外子会社に対して、有償による経済的利益の供与をした場合において、日本の親会社が受ける対価の額が独立企業間価格(注2)に満たない時は、移転価格課税(注3)を受けることになります。

(注2)独立企業間価格:取引が第三者間で行われ場場合に設定される価格

(注3)移転価格課税:海外の関連企業との取引が、恣意的に低い(又は高い)価額で行われた場合に、その取引が通常の取引価格(独立企業間価格)で行われたものとみなして、実際の取引価額と独立企業間価格との差額に課税することをいう。

このように海外子会社との取引については、無償取引は寄付金課税、有償取引は移転価格課税の問題に気を付ける必要があります。なお、寄付金課税と移転価格課税とも「取引価格の設定の誤り」を是正するという点では同じです。

注意していただきたいのは、日本の親会社が移転価格課税により追徴課税を受けることで日本と海外子会社の所在地国との間に二重課税が生じることになる場合は、当事者国の権限ある当局の相互協議(注4)により、その二重課税を防止できる余地があるのに対し、日本において寄付金課税により追徴課税される場合には、原則として相互協議の対象とならないので、二重課税の解消は困難になることが予想されるということです。

(注4)相互協議とは、日本と外国、それぞれの税務当局による、二重課税などを排除するための協議をいう。租税条約で定められている。

以上





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また、弊社は、朝日ネットワークス(タイ、インドネシア、フィリピン)と連携し、移転価格文書化等、各種国際税務サービスを提供しております。

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