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2018.04.27

【平成30年度税制改正】タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)の見直し

平成30年4月18日の新聞報道(朝日デジタル)によれば、ソフトバンクグループ(SBG)がタックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)に関して、東京国税局の税務調査で、平成28年3月期までの4年間で約939億円の申告漏れを指摘されています。これは、SBGが買収した米国の会社がバミューダに子会社を持っており、それがペーパーカンパニーと判断され、当該会社の所得が最終的な親会社であるSBGの所得に合算された結果です。

 

同申告漏れは、意図的な税逃れではないと判断され重加算税は課されませんでした。米国企業の買収前のデューデリジェンスにおいて、税務についての検討が不十分なために見落とされたものと考えられます。

 

タックスヘイブン対策税制については、平成30年度税制改正において、見直しが行われています。同税制については、平成29年度税制改正で、OECD/G20のBEPSプロジェクト最終報告書の勧告に基づき制度全体が改正されていましたが、今回は、その追加的な整備です

 

 

平成30年度税制改正の内容(タックスヘイブン対策税制について)

 

タックスヘイブン対策税制とは、日本での課税を回避するためにタックスヘイブン(税金回避地)と呼ばれる法人税率の低い国にシフトした所得を、日本の株主(親会社等)の所得と合算して日本で課税するという制度です。

 

平成29年度の税制改正では、外国関係会社の租税負担割合が30%未満でペーパーカンパニーに該当、または、ペーパーカンパニーではなくても、租税負担割合が20%未満で、かつ、「経済活動基準」のすべてを満たす場合は、当該外国関係会社の部分合算課税(受動的所得のみ合算課税)が行われます。経済活動基準のいずれかを満たさない場合は、当該外国関係会社の所得の会社単位での合算課税が行われます。

 

  1. 一定の株式譲渡益の適用対象金額からの控除

 

平成30年度の税制改正では、会社単位の合算課税における適用対象金額の計算において、一定の株式譲渡益については、適用対象金額から控除することになります。

 

国際的M&Aにより特定外国関係会社等(ペーパーカンパニー等)を保有することとなった場合において、M&A後に行う事業再編で、その特定外国関係会社等が有する一定の外国関係会社の株式等を、一定期間内にその特定外国関係会社等に係る外国関係会社等に譲渡した場合に、その譲渡により生ずる利益の額を、合算課税における適用対象金額の計算上、控除します。

 

当該措置は、租税負担を軽減することによって円滑な事業再編を推進するために設けられています。

 

  1. 無税国に所在する外国関係会社の租税負担割合

 

タックスヘイブン対策税制について、合算課税の対象となる外国関係会社に該当するかどうかの判定には、「租税負担割合(=租税の額÷所得の金額)」が用いられます。現行税制では、無税国に本店の所在する外国関係会社については、本店所在地国の税法例に基づく所得の金額がありませんので、租税負担割合が算定できないという問題がありました。

 

そこで、今回の改正では、無税国に本店が所在する外国関係会社の場合には、租税負担割合について、以下のように算定方法が明確化されました。

 

  • 所得の金額は、決算に基づく所得の金額につき、税法令がある国に所在する外国関係会社が計算する場合と同様の調整を加えて計算した額とする。この場合、その外国関係会社が受ける配当等の額があるときは、その配当等の額はその所得の金額から減算する。

 

  • 所得の金額がないとき、又は、欠損の金額となるときは、その外国関係会社に係る租税負担割合はゼロとする。

 

  1. 部分合算課税制度における部分適用対象金額

 

平成29年度税制改正において、外国関係会社の租税負担割合が20%以上30%未満で、かつ、「経済活動基準」のすべてを満たす場合に、「部分合算課税(受動的所得の合算課税.・・少額免除基準有り)」の対象となります。

 

今回の改正では、部分合算課税の対象から除外されていた関連者等に対する金銭の貸付に係る利子について、その関連者等の範囲から個人を除くこととされました。

 

また、外国金融子会社等である部分対象外国関係会社が解散により外国金融子会社等に該当しない部分対象外国子会社に該当することとなった場合には、その該当することとなった日から原則として同日以後3年を経過する日までの期間内の日を含む事業年度の一定の金融所得について、部分合算課税の対象としないこととされました。

 

  1. 経済活動基準

 

株式等の保有を主たる事業とする外国関係会社のうち外国金融子会社等に相当する金融持株会社は、事業基準を満たすこととされました。

 

 

  1. 外国金融子会社等に係る部分合算課税制度

 

外国金融子会社等に該当する保険子会社の要件について、一定の措置が講じられました

 

また、外国金融子会社等に該当する外国金融持株会社の要件について、一定の見直しが行われました。

 

 

適用時期

 

上記の改正は、外国関係会社の平成30年(2018年)4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

 

 

ご注意-タックスヘイブン対策税制は個人にも適用

 

タックスヘイブン対策税制は、内国法人だけでなく、個人居住者も適用対象となります。個人にも適用があることにご注意ください。

 

以上

 

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