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2014.07.18

移転価格リスクと向き合う①トップマネジメントの関与が不可欠

東京証券取引所によると今年(2014年)、一部上場企業の74%(昨年比12ポイント増)が社外取締役を経営陣に加えたそうです。この背景には安倍政権の新成長戦略に企業統治の強化が盛り込まれたことがあります。

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「お飾りの社外取締役など無用」と主張し続けてきたキャノンの御手洗冨士夫会長兼社長も、今年から社外取締役の導入という決断を下しました。御手洗会長はその理由として、日経新聞(2014年3月10日付)のインタビューにこう答えています。

 

「1つはM&A(合併・買収)への法的対応の強化。(中略)。もう一つは移転価格税制への対応。海外で製品や部品を生産して日本に輸入する際、外国の税務当局から実際より多額の利益が出ているとみなされて現地課税されることが増えてきた。国際税務部門の人材を育て、外国政府との交渉力を高めるために元国税庁長官の加藤治彦・証券保管振替機構社長をお招きする。」

 

キャノンが、「移転価格税制への対応」のために、元国税庁長官を顧問やコンサルタントではなく、経営陣に迎え入れたことは注目に値します。「移転価格税制への対応」というと経理部門・税務部門の担当と認識している方もおられるでしょう。けれども、それは、トップマネジメントの関与なしにできるものではありません。なぜなら、通常、海外関連会社との取引に係る移転価格の設定が事業部門・営業部門の事業戦略に基づき行われ、それをトップマネジメントが承認するものだからです。

 

トップマネジメンが、移転価格税制の理解を怠り、移転価格リスクと向き合わずに事業・営業担当部署から上がってきた価格をそのまま承認した場合、日本や外国の税務当局の移転価格調査が入り、所得更正を受け、追徴税額を支払わなければならないということにもなりかねません。さらに、いわゆる「申告漏れ」はマスコミが取り上げることも多く、上場企業であれば株価が急落することも現実に起こっています。

 

一旦、移転価格調査が入れば所得更正を受ける可能性は高く、また、その金額は莫大なものとなる傾向にあります。また、相互協議などの一定の手続きをとらない限りは、自動的に取引の相手国の税務当局から税金を還付されるものではなく、二重課税が生じるリスクもあります。

 

このような移転価格リスクを、「税務当局との見解の相違」と片付けるのではなく、周到な準備を行ってリスクを最小限に食いとどめることがトップマネジメントに求められるのではないでしょうか。

 

次回から、移転価格に係る税務調査の実態にも触れながら、いかに移転価格を設定し、どのような手段で移転価格リスクを回避するか、考察していきたいと思います。

 

以上

 【関連ブログ】

「移転価格リスクと向き合う②移転価格リスクとは?」

 

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