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2022.07.28

【グループ通算/第2回】グループ通算制度の概要 連結納税制度との比較編

  今回は「連結納税制度との比較」、「(既に連結納税を採用しているグループ法人が)グループ通算制度に移行した場合のメリット・デメリット」を簡単にご紹介します。

(1)「連結納税制度」と「グループ通算制度」の比較

項 目 連結納税制度 グループ通算制度
申告・納税 連結親法人がまとめて申告・納税(精算あり) (原則)各法人ごと
事業年度 親法人の事業年度 親法人の事業年度
開始・加入時の時価評価、欠損金の切捨て 親法人は制限無し
子法人は一定の法人を除き時価評価・欠損金の切捨てあり
(原則)時価評価、欠損金の切捨てあり
(特例)一定の要件を満たした場合適用除外
適用開始前の欠損金の使用制限 親法人は制限無し
子法人は「特定連結欠損金※1」となる
親・子法人ともに「特定欠損金※1」となる
欠損金の通算 グループ全体の欠損金として計算 グループで通算ができる
税負担の精算 個別帰属額による精算 「通算税効果額※2」による精算
制度の取り止め 任意の取り止め不可 原則、取り止め不可
規模の判定(大法人・中小法人) 連結親法人で判定 グループに1社でも大法人※3があると「グループ全体が大法人」となる
寄附金の損金不算入
所得税額控除
全体計算 各法人ごとで計算
試験研究費控除
外国税額控除
グループ全体で計算 グループ全体で計算
所得年800万円までの税額軽減(中小法人の場合) グループ全体で年800万円までの所得につき軽減税率を適用 グループ全体で年800万円までの所得につき軽減税率を適用
地方税の取扱い 原則、単体納税同様(住民税に特殊計算あり) 原則、単体納税同様(住民税に特殊計算あり)

※1 「特定連結欠損金」「特定欠損金」とは、その欠損金を持っている法人のみが、自身の所得を限度として使用できる欠損金をいう(他の法人と通算ができない)
※2 グループ全体での「損益通算」等により所得・納付税額が減少した場合に、減少した所得に税率を乗じた金額を「税額」とみなして、グループ間でその金額を精算する制度
※3 期末時点で資本金等の額が1億円超の法人

(2)既に「連結納税制度」を採用している法人が「グループ通算制度」へ移行した場合の主なメリットとデメリット

【メリット】

項 目 内 容
損益通算や欠損金の使用 グループ内に、所得がマイナスの法人や繰越欠損金がある法人がいる場合、それらをグループで使用できる
試験研究費控除、外国税額控除 グループ全体で計算をするため、単体納税では使用できなかった税額控除が使用できる可能性がある
加入時の時価評価、欠損金の切捨て 連結納税制度に比して、加入時における時価評価・欠損金の切捨てのケースが縮小された

【デメリット】

項 目 内 容
グループ内に1社でも大法人がある場合 「中小法人の特例」が使用できなくなる

例:年所得800万円までの軽減税率、交際費等の損金不算入の年800万円までの定額控除限度額、貸倒引当金、欠損金の損金算入(所得×50%の限度なし)

グループ内の法人が全て中小法人である場合 「中小法人の特例」の適用がグループ全体で適用される

例:軽減税率の適用はグループ全体で年所得800万円、交際費等の定額控除限度額はグループ全体で年800万円までとなる

離脱時の時価評価 離脱する法人が一定の要件に該当する場合には、その保有する一定の資産について時価評価の必要がある

 連結納税制度を採用しているグループについては、グループ通算制度へ移行するか、単体納税制度に戻るかの選択が求められます。
  その選択にあたっての判断ポイントの一つとしては、連結納税制度において享受できていたメリットを引き続き享受できるか否かがあると思われます。
  特に損益通算や欠損金、試験研究費の税額控除等については、上記のとおり、基本的に連結納税制度におけるメリットをグループ通算制度においても引き続き享受できると考えられる為、既に採用している連結納税制度の効果について、今一度考えてみる必要があるといえるでしょう。
 その結果、特にメリットを享受できていないと判断される場合には、単体納税制度に戻ることの検討も必要かもしれません。

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