2024.07.29
<2024年7月>社団・財団通信_公益法人改革の最新状況「財務規律の見直しについて」
2024年7月5日に「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議」の第2回フォローアップ会合が行われました。今般の公益法人制度改革に関する政令や省令は現時点では審査・検討段階ですが、この会合の中で財務規律の見直しの方向性が具体的に説明されております。今回はその概要をご紹介します。
【1】中期的収支均衡
これまでの収支相償原則については、下記のような問題がありました。
・単年度の収支赤字を強いるものであるという誤解が根強い。
・収支均衡の判定において過去の赤字が考慮されない。
・また細かな事業単位ごとの赤字が求められることで、法人の効果的な財源の活用が困難になっている。
そこで、今回の認定法改正にあたり、新たに中期的収支均衡という基準が設けられ、こういった問題の解消が図られます。
具体的には下記のような取扱いになります。
① 過去の赤字
収支相償:判定上、過去の赤字は考慮されず。
⇒中期的収支均衡:当年度の収支を比較する際、過去4年間で赤字があれば通算可能。
② 黒字が出た場合
収支相償:黒字が出た場合は、2年間で解消。
⇒中期的収支均衡:黒字が出た場合は、5年間で解消。
③ 判定の単位
収支相償:各公益目的事業単位(例:公1・公2単位)で収支相償を判定。
⇒中期的収支均衡:公益目的事業全体で中期的収支均衡を判定。
④ 判定方法の規定
収支相償:ガイドラインで規定。
⇒中期的収支均衡:内閣府令で規定(財源の有効活用という制度趣旨等をガイドラインに記載)。
【2】公益充実資金
資金の積立についてはこれまでも「特定費用準備資金」や「資産取得資金」の仕組みがありました。しかし、更なる資金活用について法人の経営判断を重視し、将来の公益目的事業を充実させるための資金として「公益充実資金」が創設されます(なお、収益事業等及び法人運営に係る特定費用準備資金・資産取得資金についてはこれまでと変更がない見込みです)。
具体的には下記のような特徴があります。
① 資金管理
特定費用準備資金・資産取得資金:各事業別・資産別に資金積立管理。
⇒公益充実資金:複数目的のために一つの資金として管理。
② 事業間の資金融通
特定費用準備資金・資産取得資金:各事業の黒字はそれ以外の事業のためには積立不可。
⇒公益充実資金:公益目的事業間での資金融通可能。将来の新規事業に備えた積立も可能。
③ 資金の明細の公表
特定費用準備資金・資産取得資金:資金の明細は各法人で備え置きで可。
⇒公益充実資金:資金の明細は各法人で公表。
【3】 使途不特定財産規制
これまでの遊休財産保有制限に代わり、新たに使途不特定財産規制が規定されます。法人内部での過大な財産が蓄積され公益のために活用されない事態を避ける、という基本的な目的は同じです。ただし、保有の上限について、これまでの「当年度1年間の公益目的事業費」から「過去5年間の公益目的事業費の平均額」に変更されるなど、より予測しやすい基準に変更されます。また、災害等の予見しがたい事由に対応し公益目的事業を継続するために必要となる財産として、公益目的事業継続予備財産を規定し、保有制限の対象から除外するなどの仕組みが設けられます。
【おわりに】
改正公益法人認定法が今年5月に成立し、公益法人制度改革の動きが本格化してきております。特に財務規律の見直しは、今後の公益法人の運営に影響するためその動きを早めに把握することが重要です。なお、 「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議」の第2回フォローアップ会合では、本号で取り上げた内容の詳細に加え、他にも「わかりやすい財務情報の開示」などの具体的な情報も記載されておりますので、公益法人インフォメーションのホームページ等でご確認いただくことをお薦めいたします。
以 上
(公益法人チーム)