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2023.07.31

【グループ通算/第12回】通算税効果額

  3月決算法人からグループ通算制度が適用されており、7月に実施する初めての申告に向けて最後の確認作業を行っています。今回は当該業務を通じてグループ通算制度に携わった中で、制度の特徴の一つである「通算税効果額」について、実務での経験を交えて記載します。


※通算税効果額の概要や計算例については、ブログの第6回(グループ通算制度の個別項目(損益通算、通算税効果))をご参照ください。

(1)通算税効果額の計算方法は?

  通算税効果額は、合理的に計算することが要求されていますが、具体的な計算方法は法令等では規定されていません。
  そこで、実務上の対応としては、国税庁より公表されている「グループ通算制度に関するQ&A」(令和4年7月改訂)問58(以下「Q&A」といいます)で紹介されている下記の3パターンの計算方法等を拠り所にしているケースが多い印象です。

・損益通算
損益通算により減少する所得金額について法人税率を乗じて算出された金額(地方法人税相当額を含みます)を通算税効果額とする方法

・欠損金の通算
例えば、被配賦欠損金控除額及び配賦欠損金控除額に基づいて通算税効果額を算出する方法

・一般試験研究費の額に係る税額控除額
通算グループ全体の税額控除額の合計額を各通算法人の試験研究費の額の比で按分して算出された金額と各通算法人の税額控除額との差額に基づいて通算税効果額を算出する方法

 実際携わった案件では上記の方法を採用して計算していましたが、上記以外の方法でも合理的な計算方法であれば認められると思われますので、グループの状況等に応じて上記以外の方法を検討する余地もあると思われます。

(2)通算税効果額に関する仕訳は?

 通算税効果額の仕訳例はQ&Aにおいて公表されていますが、実際携わった案件では連結納税制度に準じた仕訳を採用していたケースが多い印象です。なお、両者における仕訳の相違は通算親法人において生じ、通算子法人は差異がありません。

具体的には、前者は通算親法人が純粋に負担することとなる通算税効果額のみをネットで未収入金ないしは未払金として認識する方法で、後者は通算親法人が通算子法人毎にそれぞれ負担することとなる通算税効果額をグロスで未収入金ないしは未払金として認識する方法です。

 実際携わった案件は連結納税制度からグループ通算制度へ移行したケースということもあり後者を選択されたようですが、単体からグループ通算制度を採用するケースでも後者の方が各通算子法人の債権債務の把握及び精算にあたり整理し易いという点があるのかもしれません。

(3)通算税効果額の授受は行う?

 通算税効果額の授受に関する取扱いについては、税務上は任意とされていますが、実際携わった案件では授受が行われていました。この点は、実務対応報告第42号「 グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い 」が、通算税効果額の授受を行うことが前提とされていることや、貸付等の方法によらずキャッシュの移転が可能であること等が考えられます。

 ただ、あくまでも任意である為、通算税効果額の授受を行わないという選択するケースもあると思われます。その場合の理由の一つとしては、上記①でも言及したように、具体的な計算方法は法令等で規定されているものではないことや、連結納税制度と異なり、通算税効果額は税金計算とは別で自ら計算しなければならないとのこと等が考えられます。
 実務上は、グループの状況に応じて方針を決めることになると思われます。

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